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うつ病

うつ病とは

うつ病とはうつ病は身体的・精神的ストレスによって脳のエネルギーがなくなり、脳機能が上手く作用しなくなった状態です。日本では100人に約6人がうつ病を発症するといわれており、誰でも発症する可能性のある疾患です。患者数は、男性よりも女性の方が1.6倍多いと報告されています。

心が壊れる前兆？うつ病の症状とは

うつ病の症状の現れ方は人それぞれです。うつ状態と躁状態を繰り返す双極性障害と呼ばれる病気も存在します。治療法も異なるため、専門医による診断が不可欠です。
また、重症度により症状が異なります。重症度別の症状は以下の通りです。

軽症

なんとなく物事に対する意欲がない、漠然とした疲労感があるにも関わらず、患者様本人は「ただ疲れているのだろう」だと思い放置される場合が多く、日常生活や仕事で他者とのコミュニケーションなどに違和感があっても、発症を自覚するのが難しいです。また、周囲が変化に気付かないケースもあります。他にも以下のような症状が現れます。

  • 気分が落ち込む
  • 物事への関心がなくなる
  • 口数が減る
  • 飲酒量が増える
  • 悲観的になる
  • 苛立ちや不安、焦りがある
  • 仕事に集中できずミスが増える
  • 服装や外見を気にしなくなる　など

中等度

徐々にエネルギーがなくなり、睡眠不足になることがあります。仕事の効率が悪くなり、周囲も違和感を感じるようになります。患者様ご自身は頑張ってしまうので、仕事ができない自分を責めてしまうこともあります。中等度では以下の身体症状が現れることもあります。

  • 頭痛

  • めまい

  • 動悸

  • 息切れ

  • 耳鳴り

  • 肩こり

  • 飲酒量が増える

  • 食欲減退

  • 便秘や下痢

  • 不眠や過眠などの睡眠障害

  • 生理不順

  • 性欲減退　など

重度

日常生活や職場において、他人とのコミュニケーションが難しくなり、自身の存在を否定したくなるような希死念慮がみられることもあります。入院加療が必要な場合もあるため、早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。

うつ病の原因

はっきりとした原因は解明されていません。意欲や感情をコントロールする脳の働きに何らかの不調が生じて発症するのではないかと考えられています。身体的、精神的なストレスが要因であるとされていますが、はっきりとは分かっていません。辛い出来事だけでなく、喜ばしい出来事（就職・結婚、出産など）や更年期などもうつ病のトリガーとなることがあります。放置せず、適切な治療を受けることが大切です。

うつ病になりやすい人の
特徴・性格

「真面目で責任感が強い方」「誰にでも優しく接している、周囲から高く評価される方」が多いといわれています。このような性格の方は、自分の限界を超えて努力し過ぎてしまう、ストレスを溜めすぎてしまうことで、こころのバランスが崩れやすくなってしまいます。

うつ病の人がとる行動

職場でみられる行動

  • 遅刻や欠勤が増える
  • ミスが増え、仕事のパフォーマンスが低下している
  • 出社拒否するようになった
  • 同僚との会話を避ける
  • 離席の回数が増える
  • 整理整頓ができなくなる
  • 電話の受け答えができなくなる
  • 常に眠そうにしている
  • イライラしている　など

家庭でみられる行動

  • 会話がなくなる
  • 習慣が変化する　など

うつ病の診断

うつ病の診断は、次の項目で行われます。患者様ご自身の症状だけでなく、ご家族や周囲の方々からのお話も診断において重要な情報になります。

  • 抑うつ気分
  • 喜び・興味が著しく低下する
  • 気力が落ちる、疲れたように感じる
  • 集中力や思考力の低下、決断することができない
  • 食欲減退（増加）、体重減退（増加）がある
  • 不眠・過眠
  • 精神運動焦燥または制止がある
  • 不適切、過剰な罪責感、無価値観がある
  • 死について何度も考える、自殺念慮を繰り返す、自殺するための計画を立てる　など

上記の9つのうち、抑うつ気分や喜びや興味の著しい低下など、中核的な症状が5つ以上当てはまる、又はこれらの症状が2週間以上ほぼ毎日、ほぼ1日中続いている場合に診断されます。
しかし、病状が不安定な際は、患者様が精神的な動揺により状況をうまく伝えられないことがあります。その際には、ご家族の話も伺いながら診察を行い、診断する場合もあります。

うつ病の治療

薬物療法

一般的には抗うつ薬が使用されます。日本では、主に以下の3つの抗うつ薬が用いられ、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質に作用し、抗うつ効果が期待されます。また、患者様の状態に応じて不眠症状の改善のための睡眠導入剤、不安や緊張を和らげる抗不安薬などを処方することもあります。

抗うつ薬の種類

  • SSRI
    （選択的セロトニン再取り込み阻害薬）
  • SNRI
    （セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬）
  • NaSSA
    （ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬）

抗うつ薬は患者様によって異なりますが、効果を感じるまでに1～2週間程度かかります。また、症状が改善されたように感じても、すぐに服用を中止せず医師の指示に従って継続的に服用を続け、徐々に薬を減らしていくことが必要です。

心理療法

休養や薬物療法で症状が改善できても、ストレスの対処法を身に付けなければ、悲観的な考え方や捉え方などでうつ病が再発する恐れがあります。そのため、うつ病の治療では、心理療法として認知行動療法や対人関係療法も効果があります。問題を振り返り、解決策を探しながら、ストレスの対処法を身に付けていきます。

認知行動療法

うつ状態を悪化させる悲観的な考え方・物事の捉え方などを変えながら、柔軟な思考・問題解決能力を身につけます。

対人関係療法

うつ病と対人関係の関連に焦点を当てた療法です。ご自身の感情を大切にしながら問題を振り返り、対人関係のパターンを変化させることで改善を目指します。

うつ病が治るきっかけ

うつ病になると、「自分が全て悪い」「どんなことをしても上手くいかない」など、自己否定しながら自信を失い、ネガティブな感情が高まりやすくなり、「自分は誰からも必要とされていない」と思い込むことで心身のコントロールができなくなります。そのため、「自己肯定」がうつ病を乗り越える鍵となります。症状が軽減し、やりたいと思えるようになったら、他者のためになることを少し試してみると良いでしょう。「ありがとう」と感謝されることで、自分が役立っているという実感を得られます。一日の中で達成したことを書き出し、自らを褒めてあげることも有効です。小さな成功体験の積み重ねが自信の回復に役立ちます。認知行動療法は悲観的な考え方や捉え方の修正に効果的とされています。今後当クリニックでも心理士と連携し実施していく予定ですので、お気軽にご来院ください。

うつ病治療中にやっては
いけないこと

うつ病が完全に回復するまでは時間がかかります。症状の悪化や再発を防ぐために以下を理解しておきましょう。

焦らない

うつ病は真面目で責任感の強い方にみられやすいといわれますが、休養が必要な際も「自分だけが休んでいいのかな」「早く社会復帰すべきかも」など、焦りや不安に襲われることがあります。回復において最も重要なのは「十分な休息」です。ダラダラと過ごすことも治療の一環として、ご本人だけでなくご家族や周囲にも理解していただきます。無理をして急いで復帰することは、再発のリスクを高める原因となります。ゆっくり、少しずつ段階を踏んで回復するのを待ちましょう。

重大な決断をしないこと

うつ病では思考力や判断力が低下し、正確な判断が難しくなります。そのため、退職や転職、離婚など、重要な決定を一人で決断することは避けてください。これらは健康な状態であっても、慎重に判断すべきです。判断力が低下している状態で決めてしまうと、将来に影響し、うつ病の悪化や再発を引き起こす可能性があります。うつ病が回復して本来の判断力が戻るまでは重要な決断は先延ばしにするのが良いでしょう。

自己判断で治療を
やめないこと

状態が改善してくると、「もう大丈夫」と思い薬の服用や通院を自己判断で中止してしまう患者様がいらっしゃいます。うつ病は回復してからも、医師の指示に従い、再発を防ぐために薬物療法を続けなくてはなりません。自己判断で治療を中止しないようにしましょう。また、調子が良くなると服薬を忘れがちになります。必ず医師の指示に従って薬を服用しましょう。

うつ病のよくある質問

うつ病は治るのでしょうか？

うつ病で苦しい思いをされていることと思います。症状の程度により異なりますが、適切な治療を着実に継続した場合、ほとんどの患者様に改善が見られます。どうぞ安心してください。

うつ病の完治にはどれくらいの時間がかかりますか？

症状の重さにより異なりますが、治療開始後、患者様に合うお薬がすぐに見つかり調整が順調に進んだ場合、1ヶ月半ほどで大幅に改善される方もいらっしゃいます。ほとんどの場合、3ヶ月から半年ほどの治療期間を要します。

うつ病と診断された場合、仕事や学校を休む必要はありますか？

症状が軽い場合は、必ずしも休職・休学が必要というわけではありません。仕事や学業を続けながら治療を行うことも多いです。ただし、患者様の症状により休養が優先されることもあります。