睡眠障害・不眠症について
なかなか眠れない、目が覚めやすく眠りが浅い、予定より早く目が覚めることなど睡眠に関する様々な症状が睡眠障害・不眠症に含まれます。概日リズム睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群、甲状腺疾患などの病気の症状として睡眠障害が現れることもあります。アトピー性皮膚炎などかゆみを伴う疾患や、うつ病などの精神疾患でも睡眠障害が生じます。こうした疾患による睡眠障害では、睡眠薬の使用が逆効果となることがあり、まずは原因となる疾患の治療が優先して行われます。
疾患が原因の睡眠障害に関しては、原因の治療により多くの方が睡眠障害が改善・解消される傾向にあります。睡眠障害に悩まれている場合は、原因疾患の有無を確認することが必要です。十分な睡眠がとれなくてお困りの際は、お気軽にご相談ください。
睡眠障害・不眠症になる原因
身体的・心理的な要素や日常生活、周囲の環境などが関係して起こると考えられており、近年では、睡眠障害や不眠症でお悩みの方が増えています。日本では、成人の5人に1人が睡眠に関する問題を抱えていると指摘されています。不規則な生活習慣、過剰なストレス、高齢化などが睡眠障害・不眠症増加の背景にあるとされています。
身体的要因
皮膚の炎症によるかゆみ、夜間頻尿、ホルモンバランスの変化などが関連し、アトピー性皮膚炎、更年期障害、前立腺肥大、甲状腺疾患などが考えられます。
心理的要因
家庭や職場・学校などの人間関係からくる悩みや不安、ストレスなどが挙げられます。
生活習慣
飲酒、喫煙、カフェインの過剰摂取は、睡眠障害のリスクが高まります。エナジードリンクやストロング系のアルコール飲料などによる睡眠障害も増えており、夜間にコーヒーや紅茶、抹茶を飲むと眠りが浅くなる場合があります。更に、就寝前のスマートフォン操作も睡眠障害のリスクが高くなりますので、注意が必要です。
環境的要因
季節の変わり目や気温、湿度の変化、引っ越し、入学、転勤などが睡眠に影響を与えることがあります。
睡眠障害・不眠症の
セルフチェック
- 熟睡できなくなった
- なかなか寝付けない
- 何度も目が覚める
- ベッドに入った後、スマートフォンを見てしまうことが多い
- 睡眠時間は十分でも眠った感じがしない
- 起床時に疲れやだるさを感じる
- 昼になると集中力や注意力が下がり、やる気が出ない
- 昼間、我慢できないほどの睡魔に襲われることがある
- 頭痛、肩こり、みぞおちや腹部の膨満感がある
- 眠りが浅い、イライラ、気分の落ち込みがある
- 「今日も眠れないかも」と睡眠が気になる
上記の症状に該当する場合は、お気軽にご相談ください。
睡眠障害・不眠症の診断
精神生理学的要因による不眠
飛行機による時差ボケやストレスなどによる不眠です。一時的な反応で生じます。
精神障害による不眠症
うつ病、抑うつ気分、神経症などの精神疾患の症状として現れます。
飲酒や薬物使用による
不眠
慢性的なアルコールや薬物への依存によって引き起こされる不眠です。アルコール依存は、寝酒に始まり、徐々に飲まないと眠れない状態に陥ります。寝付きは良くても度々目が覚め、そのたびに飲酒を繰り返すなどの経過を辿ります。
身体疾患や中毒性疾患
などによる不眠
かゆみ、咳、喘息、発熱、鼻水、睡眠時無呼吸症候群による呼吸困難、不整脈、特発性周期性四肢運動などの身体的症状が睡眠障害を引き起こします。他の内科的疾患によって睡眠障害や不眠を起こしている可能性もあるため、原因疾患の診断、治療が重要です。
睡眠障害・不眠症の治療
身体疾患、中毒性疾患などによる睡眠障害や不眠は、アトピー性皮膚炎、咳・喘息・鼻詰まり・発熱、睡眠時無呼吸症候群、特発性周期性四肢運動だけでなく、鉄欠乏症、肝障害、腎障害、糖尿病なども疑われます。
当クリニックでは、身体疾患や中毒性疾患などによる要因以外の睡眠障害・不眠症の診断・治療を行っています。基本的に体内時計のコントロールを促す生活指導をメインとした治療を実施しながら、必要に応じて薬を最低限処方しています。
なお、強いストレスによって引き起こされた症例や、不眠によるストレスが大きい場合には、入眠をサポートする薬や、ストレスや不安の解消に有効な抗不安薬・抗うつ薬を用いた薬物療法が有効な場合があります。睡眠薬は様々な市販薬が存在しますが、長期間の服用はリスクを伴います。原因や状態に応じて、適切な治療法や対処法が異なるため、睡眠に関するお悩みがある場合は、お早めに当クリニックまでご相談ください。
睡眠障害・不眠症に関する
よくある質問
理想的な睡眠時間はありますか？
必要な睡眠時間には個人差があります。日中において眠気を感じずに活力を維持できるかが重要な目安となり、それに基づいて最適な睡眠時間を見つけられます。ただし、加齢に伴い、必要な睡眠時間が短くなり浅い眠りになる傾向があります。
睡眠障害がありますが、薬を服用せずに改善できますか？
可能です。カウンセリングなどを通じて睡眠習慣を調査し、睡眠に不適切な行動がないか振り返っていただきます。睡眠障害には、様々な生活習慣が影響していることがあり、無意識の行動が主な原因となっているケースもあります。 また、最近では、依存性・習慣性が低く、安全性の高い薬も開発されています。当クリニックでは、リスクについてもきちんと理解していただけるまで説明しますので、服薬を考えているけれど不安な方でも、ぜひお気軽にご相談ください。
受診の適切なタイミングを知りたいです。目安となるポイントはありますか?
以下の症状があり、日常生活に影響が出て週3日以上、3か月以上継続している場合は、お早めにご相談ください。
症状
- 寝つきが悪い（入眠困難）
- 睡眠中に何度も目が覚める（中途覚醒）
- 予定よりも早く目が覚めてしまう（早朝覚醒）
- 眠りたくない気持ちや眠ることに抵抗がある
日常生活に影響を及ぼす症状
- 昼間の眠気に悩んでいる
- 起床時のだるさや疲労感
- 頭痛や胃腸の不快感
- 記憶力や注意力の低下
- 作業効率の低下
- 運転時の注意欠如や事故のリスク
- イライラや抑うつ
- 睡眠にまつわる悩みや不安
- 積極性や行動力の低下 など
休日にたくさん寝る「寝だめ」は効果がありますか？
慢性的な睡眠不足が平日にあると、つい休日にたくさん寝てしまいますが、このやり方は平日の覚醒リズムなど体内時計を大きく乱し、結果的に週末ごとに時差ぼけが生じているような状態でストレスとなり、心身に負担をかけます。そのため、休日の寝だめは避け、平日の睡眠時間をしっかり確保することが、睡眠障害や不眠の解消に効果的であることが分かっています。
不眠症の薬をやめるのが怖いです。大丈夫ですか？
睡眠障害や不眠症で処方されるお薬は、長期間の服用が必要だと思われがちですが、そうとも限りません。最近では、依存性の低いお薬もあります。症状が改善しづらい場合もありますが、最初は効果の高いお薬を使い、改善が確認されたら依存性の低い薬に切り替えることも可能です。ただし、自己判断で急に薬を減らすことや中止することは危険です。減薬を考える際は、必ず主治医と相談してください。不明点などございましたら、どうぞご相談ください。
薬の服用を中止すべきタイミングはありますか？
はい、ございます。特に以下のような症状を起こさないよう、症状の改善がみられたら医師と治療終了へ向けた計画を相談することが重要です。定期的に通院し、経過を共有しましょう。
- これまでと同じ薬を服用しても全く眠気を感じない
- 昼間に眠気を感じる
- 記憶力が低下している
- 立ちくらみや、転倒
睡眠薬をアルコールと一緒に摂取するのは危険ですか？
アルコールとベンゾジアゼピン系睡眠薬は、肝臓で同じ酵素で代謝される特性があります。同時に摂取すると、それぞれの代謝が遅くなり、作用がより強く持続する可能性があります。この結果、翌日には眠気やふらつきが起きやすくなり、呼吸抑制や記憶障害などの重篤な副作用が現れるリスクも懸念されます。実際、飲酒と睡眠薬の同時摂取により、呼吸停止が引き起こされるケースも報告されています。 さらに、睡眠薬の代わりに寝酒するケースもありますが、アルコールは眠りを誘う一方で、睡眠中に目を覚ましやすくなり、結果的に睡眠の質が著しく低下する可能性があります。寝酒は睡眠障害を悪化させ、アルコール依存症のリスクを高め、心身の健康に悪影響を及ぼすこともあるのでご注意ください。