社会・社交不安障害(あがり症)とは
社交不安障害は「赤面恐怖症」や「対人恐怖症」とも呼ばれる疾患です。人前で恥をかく、恥ずかしい思いをすることに対する恐怖感が強く、社会的状況に強く不安や苦痛を感じるようになり、それを回避しようとします。進行すると社会生活への影響も大きくなります。以前は性格の問題や気の持ちようといわれていましたが、適切な治療が不可欠な疾患です。お早めに当クリニックまでご相談ください。
- 食事中に他人に見られると緊張してしまい、食事できない
- 口臭や体臭など、自分の匂いが他人に不快な思いをさせていないか過度に心配してしまう
- 人前で顔が赤くなり、恥ずかしいため人混みを避けてしまう
- スピーチをする前に頭が真っ白になり、パニック状態に陥る
- 職場で来客にお茶を出す際に、手が過度に震えてしまう
- 正式な場で文字を書く際、手が震えて上手く書けない
社会・社交不安障害に
なりやすい人
小児期にも見られることがありますが、10代半ばでの発症が多く、25歳以上での発症は稀と言われています。恥ずかしい経験や強いストレスを受けた時に、突然発症することもあり、知らず知らずのうちに徐々に悪化することがあります。また、社交不安障害の発症率は男性より女性の方が高いです。
社会・社交不安障害の症状
- 初めて会った人と会う際に過度に緊張する
- 他人と接することを過度に恐れ、緊張する
- 人前で食事できない
- 人前で電話するのが怖い
- 人前で文字を書く時、震えて上手く書けない
- 人前でプレゼンテーションすることを過度に恐れ、緊張する
- 周囲からの注目を過度に怖がる
- 注目を浴びると緊張して汗をかく、赤面する
- 周囲に人がいると用を足せない
上記のような社会的な状況への不安や、そのような状況からの回避行動などが特徴として挙げられます。
社会状況に対する予期不安は、注目されること、収拾がつかないような失敗をすることに対して恐怖を感じるため、そのような状況を避ける傾向があります。このような予期不安から行動を避けることを「回避行動」と呼びます。回避行動が重くなると職場や学校に行けなくなる、家から出られなくなる、うつ病を併発して社会活動が困難になることがあります。
社会・社交不安障害の原因
社交不安障害の原因は詳しくは分かっていません。しかし、生育環境や生物学的な特性が症状の発現に大きく関与するとされています。不安を引き起こしやすい(脳の扁桃体の過活動状態が起こりやすい)、または同様の特性を持つご家族がいる場合に、生じやすい傾向があるとされています。患者様の中には過去に人前で重大なミスを犯して以来、同じような状況にいると不安が高まり、症状が現れるという方もいらっしゃいます。
社会・社交不安障害の診断
DSM-5による精神障害の診断基準では、診断のための10の項目が挙げられています。社交不安障害は、発症が早くて7〜8歳、平均的には10歳とされています。
一方、人前で話すまたは行動する際に症状が生じる場合は、パフォーマンス限局型と呼ばれ、その発症平均年齢は約17歳です。
社交不安障害には、遺伝的要因が関与することもありますので、家族歴の確認も診断に重要です。また、社交不安の症状はうつ病、発達障害、統合失調症の患者様にも同様の症状が見られることがありますので、他の精神疾患との鑑別が必要です。当クリニックでは、経験豊富な医師が丁寧に診療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
社会・社交不安障害の治療
薬物療法とカウンセリング、生活指導を行います。薬物療法は他の症状(感情・思考・行動)や薬剤特性(衝動的な方には不向き)に基づいて選択し、症状の緩和を目指します。社交シーンでの不安や緊張、身体反応を緩和し、「何かあっても頑張れる」「乗り越えられる」という自信を持てるように支援いたします。
社会・社交不安障害の
よくある質問
社交不安障害を早く治すにはどうすればいいですか?
早めに適切な治療を受けることが大切です。社交不安障害の治療は、薬物療法だけでなく心理療法もありますので、医師と相談して適切な治療を受けるのが望ましいでしょう。なお、心理療法については、効果が出るまでにある程度の時間がかかる場合がありますので、焦らずにじっくりと継続していきましょう。
社交不安障害の治療にはどの程度の期間が必要ですか?
社交不安障害の治療は、長期的に取り組む必要があります。薬物療法だけでなく、心理療法を通じてこれまでの行動や考え方を変えていく必要があります。当クリニックでも今後実施していく予定ですので、お気軽にご相談ください。
社交不安障害は再発しないのでしょうか?
社交不安障害は再発のリスクがあります。例えば、上司が変わる、部署異動、部下に指示を出す立場になるなど職場環境の変化や、PTAの役職に就いたりする家庭環境の変化などで再発することがあります。薬を継続して服用している間は不安が軽減されていても、薬の服用を中止した後に再び症状が現れる可能性があります。社交不安障害についてしっかりと理解し、治療を継続することが重要です。
社交不安障害が改善されると、緊張しなくなりますか?
社交不安は個人によって程度の違いはありますが、基本的に誰でも経験するものです。多くの方は人前で緊張したことがあるでしょう。人前で緊張することは、決して悪いことではありません。むしろ、適度な不安や緊張があった方が、社交場面では有益になる場合もあります。しかし、社交不安障害になると不安や緊張の程度が強くなり、動悸、呼吸困難、めまい、吐き気、赤面などの自律神経症状が現れることがあります。このような状況で、社交場面を避ける、日常生活に支障がある場合は治療が必要です。治療においては、不安を取り除くことや緊張をなくすことを目指すのではなく、不安や緊張の程度を軽減させ、社会生活を送るうえで上手くコントロールできる状態を目指します。
社交不安障害は我慢して慣らせば治りますか?
長く我慢される方もいらっしゃいますが、単に我慢していれば慣れるというわけではありません。患者様にとって、失敗や苦しい出来事が深く残り、苦手な状況への苦手意識がより強くなる恐れもあります。社交不安障害を治療する際は、医師など専門家のアドバイスに従い、少しずつ苦手な環境に対処する方法を探っていきます。専門家のアドバイスに従いながら、適切な治療を続けることで、状況に応じて自立した対処ができる力を身につけていきます。まずは一緒にトレーニングしていきましょう。
社交不安障害は、性格の問題によって起こるものではありませんか?
実際に社交不安障害の症状に対して「自分の性格のせい」と思われる患者様も沢山いらっしゃいます。社交不安障害の平均発症年齢は10代半ばです。この時期は周囲との人間関係が複雑になり、感情の揺れ動きも大きく、性格や人格が形成されていきます。そのため、このような時期に症状が現れても、ご本人や周囲は病気だとは考えず、性格の問題と考えてしまうことが多いです。しかし、社交不安障害は性格の問題によって起こるものではありませんので、適切な治療が不可欠です。